(最終更新月:2023年9月)
✔以下の疑問をお持ちの方へ向けた記事です
「Dockerのマルチステージビルドとは何だろう?」
「マルチステージビルドのメリットや使い方を知りたい」
「マルチステージビルドの具体的なコード例を見てみたい」
✔当記事を読むことで得られる知識
- Dockerのマルチステージビルドの基本概念
- マルチステージビルドのメリットと使い方
- 具体的なマルチステージビルドのコード例
当記事では、Dockerのマルチステージビルドとは何か、その基本概念から使い方、具体的なコード例までをわかりやすく解説します。
マルチステージビルドを使うことで、イメージのサイズ削減やビルドの効率化が可能です。
初めてマルチステージビルドに触れる方でも安心して学べる内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
Dockerに必要な要件
こちらでは、Dockerの導入に際しての「要件」についてお伝えしていきます。
- Dockerの基本要件
- システム環境の確認
- 互換性のチェック
Dockerの基本要件
Dockerを使用するためには、特定の基本要件が必要です。
具体的には、サポートされたオペレーティングシステム、十分なメモリ容量、適切なバージョンのDocker Engineなどが求められます。
これらの要件が満たされないと、Dockerの正常な動作が保証されません。
詳しくはこちらをどうぞ。
システム環境の確認
Dockerの導入に先立ち、システム環境を確認することが重要です。
使用するOSのバージョンや、CPU、メモリのスペックなど。
これによって、Dockerの性能や互換性が大きく影響を受けるため、慎重な確認が求められます。
互換性のチェック
Dockerの導入時には、既存のシステムとの互換性を確認する必要があります。
そのためには、使用するプラットフォームやほかのソフトウェアとの連携がスムーズかをチェックします。
互換性の問題がある場合、不具合が生じる可能性があるため、注意が必要です。
例えばLinuxではDocker Desktopは、ベータ版のみ提供されています。Linuxで使うのであれば、Docker Engineを単独でインストールするのがおすすめです。(2023年9月時点)
マルチステージビルドの登場前
こちらでは、マルチステージビルドの登場以前のDockerのビルドプロセスについてお伝えします。
- Dockerのシングルステージビルド
- 限界と課題
- 以前のビルド方法との比較
Dockerのシングルステージビルド
シングルステージビルドは、ひとつのイメージ上でビルドから実行までを一貫しておこなう手法。
開発のシンプルさがメリットですが、イメージのサイズが大きくなることが課題です。
例として、不要なビルドツールや依存関係がイメージに残るケースが挙げられます。
限界と課題
シングルステージビルドの限界として、以下のようなことが挙げられます。
- イメージのサイズが大きくなりやすい
- セキュリティ上のリスク
- 効率的でないビルドプロセス
このような課題は、ビルドの速度や運用の効率に影響を及ぼしました。
以前のビルド方法との比較
シングルステージビルドとこれからお伝えするマルチステージビルドを簡単に比較してみましょう。
まずは詳細を理解する前に、概要を掴んでください。
項目 | マルチステージビルド | シングルステージビルド |
---|---|---|
目的 | 複数のステージでビルドを行い、最終的なイメージを最小限にする | ひとつのステージで全てのビルドとセットアップを行う |
イメージサイズ | 通常、小さい (不要なファイルやツールを除外できる) | 通常、大きい (全てのビルドツールや中間ファイルが含まれる可能性がある) |
ビルドの複雑さ | 複雑 (複数のステージを定義する必要がある) | シンプル (ひとつのステージで全てを行う) |
ビルド時間 | 一般的には長い (複数のステージを経るため) | 短い (ただし、イメージサイズが大きくなる可能性がある) |
最適な使用ケース | 本番環境でのデプロイ (最小限のイメージサイズが求められる場合) | 開発やテスト環境 (ビルドのシンプルさが求められる場合) |
注意点として、以下も頭にいれておきましょう。
- マルチステージビルド
ビルドツールや中間生成物を最終的なイメージから除外することで、イメージのサイズを削減できます。これにより、デプロイ時間の短縮やセキュリティの向上が期待できます。 - シングルステージビルド
設定がシンプルであるため、開発中やテスト環境での使用に適しています。しかし、不要なファイルやツールがイメージに含まれるため、イメージのサイズが大きくなる可能性があります。
どちらの方法を選択するかは、使用ケースや要件に応じて適切に選択することが重要です。
マルチステージビルドとは
こちらでは、「マルチステージビルド」について深く掘り下げていきます。
- マルチステージビルドとは
- マルチステージビルドの目的
- Dockerとマルチステージビルド
マルチステージビルドとは
マルチステージビルドは、Dockerのビルドプロセスを複数のステージに分割し、それぞれのステージで特定のタスクを実行する手法です。
最終的には、必要なものだけを含んだ軽量なイメージが生成されます。
この方法により、不要なファイルの削除やセキュリティの強化が実現されました。
例として、Go言語のアプリケーションをビルドする際のマルチステージビルドを見てみましょう。
# ビルドステージ
FROM golang:1.16 AS build-stage
WORKDIR /app
COPY . .
RUN go get -d -v
RUN CGO_ENABLED=0 GOOS=linux go build -o myapp .
# 実行ステージ
FROM alpine:latest
WORKDIR /root/
# ビルドステージでビルドしたバイナリをコピー
COPY --from=build-stage /app/myapp .
CMD ["./myapp"]
マルチステージビルドの目的
マルチステージビルドの主な目的は、Dockerイメージのサイズ削減とセキュリティの強化です。
イメージサイズの削減により、デプロイメントの速度向上やストレージの節約が可能となります。
不要なファイルを除外することで、セキュリティリスクも軽減されました。
Dockerとマルチステージビルド
Dockerは、マルチステージビルドをネイティブにサポートしています。
Dockerfile内で複数のビルドステージを定義することが可能で、開発者はこれを利用して効率的なビルドプロセスを設計できます。
例として、ビルドツールを使用したステージと実行環境を分けることが一般的です。
マルチステージビルドの誕生
こちらでは、「マルチステージビルドの誕生」についてお伝えします。
- マルチステージビルドが生まれた背景
- Dockerの影響
- 初期の反応と受容
マルチステージビルドが生まれた背景
マルチステージビルドは、シングルステージビルドの限界から生まれました。
具体的には、イメージサイズの膨張とセキュリティの課題を解決するのがその目的。
シングルステージビルドでは以下のコマンドでビルドをおこなっていたため、イメージサイズが大きくなりがちでした。
FROM ubuntu
RUN apt-get install -y build-essential
COPY . /app
WORKDIR /app
RUN make
Dockerの影響
Docker自体の進化がマルチステージビルドの誕生に影響を与えました。
Dockerは開発者の要求に応えるために進化し続け、それによって以下のようなマルチステージビルドのコマンドが実現されました。
# ビルドステージ
FROM ubuntu as build
RUN apt-get install -y build-essential
COPY . /app
WORKDIR /app
RUN make
# 実行ステージ
FROM ubuntu
COPY --from=build /app /app
WORKDIR /app
この形式は、イメージサイズを削減し、ビルドプロセスを効率化する大きな一歩でした。
初期の反応と受容
マルチステージビルドが発表された当初、開発者からは肯定的な反応が多く寄せられました。
例として、TwitterやGitHubでの賛同の声や、早速の導入事例などが挙げられます。
特に、イメージサイズの削減が即座に実感できる点が、その受容を後押ししました。
マルチステージビルドの実践
こちらでは、「マルチステージビルドの実践」について詳しく説明します。
- Dockerfileの書き換え
- 利用によるメリット
- ビルドステージの命名と指定
- 外部イメージと新しいステージの利用
Dockerfileの書き換え
マルチステージビルドへの移行は、Dockerfileの書き換えによっておこなえます。
具体的には、以下のコマンドを使ってビルドと実行ステージを分割します。
# ビルドステージ
FROM debian as build-stage
RUN apt-get update && apt-get install -y gcc
COPY . /src
WORKDIR /src
RUN gcc -o app main.c
# 実行ステージ
FROM debian
COPY --from=build-stage /src/app /app
CMD ["/app"]
この分割によって、ビルド環境と実行環境を別々に構築できます。
利用によるメリット
マルチステージビルドの利用によるメリットは多岐にわたります。
例えば以下のようなものです。
- イメージサイズの削減
- セキュリティの向上
- ビルド時間の短縮
これらのメリットは、開発からデプロイメントに至る全工程で効果を発揮します。
ビルドステージの命名と指定
マルチステージビルドでは、ビルドステージの命名と指定が可能です。
具体例として以下のように、ビルドステージに名前をつけて、それを後のステージで参照できます。
FROM debian as compile-stage
# コンパイル処理
FROM debian as test-stage
# テスト処理
FROM debian
COPY --from=compile-stage /app /app
# 実行処理
この命名と指定によって、ビルドプロセスの柔軟性と可読性が向上します。
外部イメージと新しいステージの利用
マルチステージビルドでは、外部イメージや新しいステージの利用が可能です。
以下のコマンドのように、異なるイメージを用いたステージを作成することで、特定のタスクに最適化された環境を構築できます。
FROM golang:1.16 as build-stage
# Go言語のビルド処理
FROM node:14 as frontend-stage
# フロントエンドのビルド処理
FROM nginx
# Webサーバの設定
このような利用は、ビルドプロセスの効率化とカスタマイズを促進します。
バージョン互換性
こちらでは、「バージョン互換性」について見ていきましょう。
- Dockerとの互換性
- ビルドシステムとの調和
- 互換性のトラブルシューティング
Dockerとの互換性
Dockerのバージョンとマルチステージビルドの互換性は、開発プロジェクトの成功にとって重要です。
例として、Docker 17.05以降でマルチステージビルドがサポートされています。
以下のコマンドでDockerバージョンを確認することができます。
docker --version
必要なバージョンが確保されていない場合、適切なバージョンへのアップグレードが求められます。
ビルドシステムとの調和
ビルドシステムとの互換性も考慮するべき重要な側面です。
具体的には、使用するビルドツールやプラットフォームによっては、特定の設定やプラグインの追加が必要な場合があります。
例えば、Jenkinsとの組み合わせでは以下のようなプラグインのインストールが必要です。
jenkins-plugin install docker-build-step
互換性のトラブルシューティング
互換性の問題が発生した際には、詳細なエラーログの確認や設定の調整が必要です。
具体的には以下のコマンドを実行し、エラーの原因を特定できます。
docker build --debug .
こういったデバッグ手法を用いることで、問題を効率的に解決することが可能です。
よくあるトラブルと対処法
こちらでは、「よくあるトラブルと対処法」についてお伝えします。
- Dockerのエラー対応
- ビルドプロセスの最適化
- セキュリティ対策
Dockerのエラー対応
Dockerでよくあるエラーのひとつは、イメージのビルドエラーです。
具体的には、以下のようなコマンドを用いてエラーログを確認し、問題を診断できます。
docker build --no-cache .
このコマンドにより、キャッシュを無視してビルドを行い、エラーの原因を明確にできます。
ビルドプロセスの最適化
ビルドプロセスの最適化は、ビルド時間の削減と効率化に役立ちます。
例えば、以下のようなコマンドで必要な依存関係のみをインストールすることで、ビルド時間を大幅に削減可能。
COPY package.json .
RUN npm install
COPY . .
セキュリティ対策
セキュリティ対策はマルチステージビルドの重要な側面です。
具体的には、以下のようなコマンドを使用して、不要なファイルや権限の削除をおこなえます。
FROM debian as build-stage
RUN useradd -m user
USER user
# 以降の処理
このようにユーザー権限を限定することで、セキュリティリスクを軽減します。
ツールとリソース
こちらでは、「ツールとリソース」について詳しくお伝えします。
- Docker対応のマルチステージビルドツール
- 学習リソース
- コミュニティとサポート
Docker対応のマルチステージビルドツール
Docker対応のマルチステージビルドツールは、開発の効率化を図るための重要なアセットです。
例として、BuildKitを有効にするコマンドは以下のようになります。
export DOCKER_BUILDKIT=1
docker build .
BuildKitは、並列処理やキャッシュの効率的な管理など、ビルドプロセスの高速化を実現します。
学習リソース
マルチステージビルドの学習に役立つリソースは多岐にわたります。
例えば、Dockerの公式ドキュメントやオンラインチュートリアルなど、基本から応用まで幅広く学べます。
以下は当サイトのDocker記事をまとめたもの。
具体例付きで載せているので、ぜひご覧ください。
コミュニティとサポート
Dockerコミュニティとサポートは、知識の共有や問題解決に役立ちます。
DockerフォーラムやGitHubリポジトリなどでのコラボレーションが活発におこなわれています。
まとめ
当記事では、Dockerのマルチステージビルドについて学習してきました。
- Dockerのマルチステージビルドは、ビルドプロセスの効率化、セキュリティの強化、および管理の単純化に多くのメリットを提供する
- ここで紹介した手法とツールは、最新の開発プラクティスに適合し、コンテナ化されたアプリケーションの開発をよりスムーズで効果的にするもの
Dockerとマルチステージビルドの旅は、ここで終わりではありません。
今後のプロジェクトでの成功と、さらなる探求のための出発点にしていただければ幸いです。