2024年のクローズした案件から学ぶ、成功するプロジェクトマネジメント運営

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(最終更新月: 2025年2月)

プロジェクトマネジメントの世界では、途中で方針転換があったり、やむを得ない事情でサービスをクローズ(終了)せざるを得ないケースも少なくありません。

「計画通りにサービスをリリースし、運用を続けられるのが当たり前」ではないのです。

2024年に実際にクローズしたITサービス・プロダクトの例を振り返り、なぜクローズに至ったのか、その理由や背景、そしてプロジェクトマネージャーとして何を学ぶべきかを考えてみたいと思います。

当記事のターゲットはプロジェクトマネジメント初心者の方です。

できるだけ専門用語を避け、実際の事例から「成功するために気をつけたいポイント」を紹介します。

運営者プロフィール

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現在はIT企業のプロダクトマネージャーとして、個人向け/社内向けシステムなど、複数のシステム開発・運営に携わっています。

Webサイト構築やECサイトの開発経験に加えて、PythonなどのプログラミングやSalesforceなどのクラウドアプリケーションに関する幅広い知識・経験を活かして「プログラミング初心者がスムーズに学べるサイト」を目指しています。

Githubでは、趣味で作成したアプリなどを公開しています。

https://github.com/Yulikepython/

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クローズした案件で見えてきた主な終了理由

2024年にサービス終了を発表・実行した事例をいくつか調べると、「なぜそのサービスはクローズしたのか」を大きく以下のパターンに分類できます。

  • 競合サービスとの重複や戦略的統合
  • 利用者数の伸び悩み・市場競争の激化

競合サービスとの重複や戦略的統合

例:Google Podcasts → YouTube Musicへ統合、Mint → Credit Karmaへ統合など

タイトル内容
理由– 自社内で似た機能を持つサービスが増え、「わざわざ別アプリで提供する意味がない」と判断。
– 他社との激しい競合にも勝てず、「○○分野から撤退・整理する」と決定。
プロジェクトマネジメント視点の学び– 同じ組織内や他社の動向を常にウォッチし、リソースの重複や使い勝手の悪さを定期的に精査する。
– 統合・撤退を視野に入れた長期的戦略をリリースの時点から見据える。
どう避ける?– 既存サービスとのすみ分けを明確化する。
– 社内外のステークホルダーを巻き込んで、どこに最も注力すべきか常に検証する。
ここまでやっておこう– 撤退・統合を考える「タイミングの指標(KPI)」を事前に設定する。
例:月間アクティブユーザー数が○○万人を下回ったら統合検討など。

利用者数の伸び悩み・市場競争の激化

例:Google Jamboard、Thrive(インドのフードデリバリー)など

タイトル内容
理由の概要– 新規ユーザーが伸びず、維持コストや開発コストに見合う収益を確保できない。
– 他の強力な競合(ZomatoやSwiggyなど)にユーザーを奪われ規模拡大できず撤退。
プロジェクトマネジメント視点の学び– 市場調査やユーザーリサーチを定期的に行い、「競合が勝っている理由」を可視化する。
– 運営コストやマーケティングコストのシミュレーションを強化し、早期に危機感をキャッチする。
どう避ける?– 尖った独自の差別化ポイントを明確にする、早い段階で提携やリソースシェアを検討する。
– 無理に“攻めの拡大”をするより、小さく始めてユーザー数に応じた徐々の投資拡大を行う。
ここまでやっておこう最低限の撤退基準(ダメージを最小化するライン)を決める。
そこに近づいたら経営陣含め全員で改善 or ストップの判断を迅速に下せる体制を用意する。

事業統合(買収やアクイハイヤー)による終了

例:Mayday Calendar(買収先に吸収され独自サービス終了)、Bench Accounting(救済買収)など

タイトル内容
理由の概要– スタートアップが大手に買収され、サービスそのものが必要なくなる(技術・人材だけを獲得するパターン)。
– 経営不振の結果、急遽他社による買収が行われ突然サービス停止。
プロジェクトマネジメント視点の学び– 投資家・経営者の意向と現場プロジェクトとのギャップを埋めるためのコミュニケーションが重要。
– 急な買収が発生し得るので、サービス継続に必要なコアメンバーと、具体的な運用マニュアルを整理しておく。
どう避ける?– 企業としての方向転換(M&Aなど)はプロジェクトマネージャーだけではコントロールが難しい外部要因。
– ただし、プロジェクトの資産やナレッジは常に引き継ぎできる状態を作っておく。
ここまでやっておこう– 技術的ドキュメントや運用フローを日頃から簡潔にまとめ、いつ買収や統合があっても速やかに移管可能にしておく。

プラットフォーム・技術の世代交代

例:Xbox 360 マーケットプレース(新世代機へ移行)、Verizon Messages (Message+)(RCSへの移行)など

タイトル内容
理由の概要– 新技術や新ハードの登場により、旧システムのサポートがコスト増大&ユーザー離れ。
– 時代遅れになったプラットフォームを維持する意義が低下。
プロジェクトマネジメント視点の学び– 技術トレンドや今後の業界標準(RCSなど)を常に把握し、いつ見切りをつけるか判断材料を明確にする。
– 後方互換やデータ移行など、ユーザーがスムーズに新環境へ移れるような仕組みづくりも考慮する。
どう避ける?– 避けるというより、常に最新動向を追い、積極的に次のステージへ移るほうがベター。
ここまでやっておこう– サービスのライフサイクルを想定し、最終段階(サンセット)に必要なステップを設計しておく。

ブランド/評判の毀損、政策・規制など外部要因

例:Parler(政治的・社会的要因でユーザー・スポンサー離れ)など

タイトル内容
理由の概要– 社会的な批判や広告収益の停止など、外部からの圧力でサービス維持が難しくなる。
– レギュレーションの変化や規制の強化などでサービス形態そのものが成り立たなくなる。
プロジェクトマネジメント視点の学び– マーケティング、法務、広報など他部門と連携し、コンプライアンス面・リスク管理を怠らない。
– SNSなどユーザーコミュニティの反応を速やかに把握・対処する、炎上リスクへの備え。
どう避ける?– 広告モデルや利用規約の策定を慎重に行う。
– 政策・社会情勢の変化に柔軟に対応する。
ここまでやっておこう– 問題が起きたときの早めのコミュニケーションプランをあらかじめ作成しておく
(プレスリリース、FAQ、SNSなど)。

サービスクローズ時の一般的な進め方(ステップ例)

クローズを回避するのが理想ですが、万が一「サービス終了」が現実的な選択肢となった場合、ユーザーや関係者への混乱を最小限に抑えつつ終わらせることが大切です。

多くの企業が実践している手順をまとめます。

タイトル内容
方針決定・終了時期の確定– 経営陣・主要ステークホルダーと協議
– 終了の確度が高いのであれば決定を正式化し、いつまでに止めるかの日程を先に決める。
告知プランの策定(いつ、どのチャネルで、何を伝えるか)– 公式サイト、アプリ内通知、メール、プレスリリース等を通じてユーザーにできるだけ早く周知。
– 「移行先の推奨サービス」や「データのエクスポート方法」など、利用者が困らないように具体的なサポート情報を明示する。
移行ツール・代替案の用意– 例えばGoogle PodcastsYouTube Musicへの移行ツール提供のように、ユーザーがスムーズにデータを移せると「離脱時の不満」が大幅に減る。
– 他社サービスを使うしかない場合でも、なるべく候補をいくつか案内することでユーザーの不安を軽減。
ユーザーデータの保存・エクスポート期間の設定– 「○月○日まではダウンロード可能」など期限を定め、期限終了後にデータ削除を行う。
– 場合によっては法務・規制の観点から、一部データを一定期間保持する必要もあるので注意。
最終的なサーバー停止とサポート終了– 終了日以降はログイン不能・アクセス不能となり、問い合わせ窓口もクローズ。
– 「最後まで責任をもって対応した」事実を残すために、FAQやサポートページを終了後も一定期間は公開しておく企業も。
振り返り・レッスン学習の文書化– クローズ後には必ずプロジェクトの振り返り(ポストモーテム)を行う。
どこが成功/失敗だったか、次に活かせる教訓は何かをドキュメント化。

プロジェクトマネージャーが押さえておきたい「攻めと守り」のバランス

「クローズしないためにリスクばかり避ける」という姿勢だと、思い切ったイノベーションや挑戦ができず、競合に追い抜かれてしまうかもしれません。

一方で、「守り」の視点を全く持たず突っ走ると、予期せぬ負債やトラブルで一気に事業継続不能になるリスクがあります。

タイトル内容
攻め(イノベーション・大胆な拡大)– 新機能リリースやマーケティング投資をスピード感をもって実行して、競合優位を築く。
– 「成長カーブが描けているのに予算やリソースをケチりすぎると一気にチャンスを逃す」。
守り(リスクヘッジ・撤退基準の可視化)– 常に資金繰りや利用状況をモニタリングし、不調のサインを早期発見。
– 撤退すること自体が悪ではなく、「痛手が大きくならないうちにラインを引く」のが健全。

初心者のプロジェクトマネージャーは、上司や経営陣に対して「リスクを認識しつつも攻めるべきところは攻める」というバランスを説明できるようになると、プロジェクトがうまく回りやすくなります。

「外的要因」は完全にはコントロールできない

市場の急変や買収話、法規制の変更など、外から降ってくる要素はどうしてもコントロールが難しいです。

今回紹介した15のサービス終了理由の中にも、企業買収や業界再編など、「プロジェクトチームだけの努力では回避困難」なものが含まれています。

しかし、そうした状況でもプロジェクトマネージャーができることはあります。

タイトル内容
情報収集とリスクアセスメント– いつ何が起きてもおかしくない時代だからこそ、「もし○○が起こったらどうする?」を常にシミュレーションする。
迅速なコミュニケーション– 緊急時ほど社内外の連携が重要なので、日頃からステークホルダーとの信頼関係を構築しておく。
最悪のケースでもサービス価値を残す準備– 上記で触れたように、ドキュメント化・ナレッジ共有を適切に行い、たとえクローズしてもプロダクトの魂を引き継げる状態にしておく。

まとめ:クローズ事例から学ぶプロジェクトマネジメントの心得

2024年にクローズしたサービスを例に見てきましたが、どの事例にもプロジェクトマネジメントの教訓が詰まっています。

大きなポイント

  1. 市場・ユーザーに十分受け入れられるかを常に検証しながら進める。
  2. 競合や自社内での機能重複をチェックし、必要に応じて戦略を見直す。
  3. 買収や事業統合などの外的要因も念頭に置き、いつでも引き継ぎ可能な体制を作る。
  4. ユーザー目線で「終わらせ方」をデザインし、混乱を最小限に。

まずは「クローズせず長期運営する」ことを目指す。

ただし、最悪の場合でも慌てずスムーズに終了できる道筋を用意しておくのも、現代のプロジェクトマネージャーに求められる総合的なスキルといえるでしょう。

ぜひこれらの事例を教訓に、「攻めるところは攻めつつ、必要なリスク管理も忘れない」プロジェクト運営を心がけてみてください。

(おまけ)クローズ時の実例

  • Google Podcasts
    • 終了を発表した際には、YouTube Musicへの移行ツールを公式に案内し、ユーザーがスムーズに代替サービスへ移行できるようサポートを行った。
    • 参考リンク
  • Yahoo! JAPANタグマネージャー
    • 利用者減少を理由に終了したが、約1年という猶予期間を設けて他社ツールへの移行を推奨し、管理画面の閉鎖時期も明確に周知した。
    • 参考リンク
  • Bench Accounting
    • 突然の資金難からサービス停止を公表したが、わずか3日後に買収先が決定しユーザーのデータ移行が確保された。
    • 事業がどう転んでもデータ保全とユーザーサポートが大事であることを示す好例といえる。
    • 参考リンク

こうした具体例を知ることで、「いざクローズ」という事態になったときにも、ユーザーの不満や混乱を最小限に抑えつつ、プロジェクトを円滑に終了させる道筋をイメージしやすくなるはずです。

プロジェクトマネジメント初心者の方へ:

サービスが始まる前・始まった直後は、楽観的になりがちですが、終わりのデザインまで考えておくことが実はとても重要です。

「クローズしないことを目指しつつ、万が一のクローズもスマートに行う」――この両立が、プロジェクトを最後まで責任を持って運営するプロジェクトマネージャーの使命だと言えるでしょう。

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